ウチの近所謎の冒険
家族で遊ぶために【ウチの近所謎の冒険】という謎解きゲームを作りました。
謎をたんねんに解きながら街を歩きまわり、正解にたどりつくまでを楽しむ「ナゾトキ街歩きゲーム」や「リアル宝探し」。
チェックポイントをひたすらめぐる苦行のようなスタンプラリーとはちがって、次にどこへむかうのかわからないまま手さぐりで進むひねりのきいたゲーム性が楽しいですよね。
※東京迷宮パズル/地下謎への招待状/鉄道探偵K「迷Q」/ポケモン謎解きラリー/ミナト調査団と幻の金貨 などなど
我が家はみんな、謎解きゲームが大好きです。これまでに東京の街なかやショッピングモールのイベントで実施されていたいくつものゲームに家族4人で挑戦してきました。
ひとつのゲームを終えたあとに、子供たちが「もっとやりたい! 来年まで待てない!」とねだります。
しかし小学生でも参加できるくらいのちょうどいいぐあいの謎解きゲームが、いつでも近くで開催されているわけではありません。
それならばと奮起し、子供たちに遊ばせるために自分で謎解きゲームを作ることにしました。
構想・設計・デザイン・検証。孤独なPDCAサイクル。
子供でも大人でも楽しめるよう、難易度をどれくらいにすればいいのか、ずいぶん悩みました。平日の仕事を終えて、電車で自宅もより駅までもどってからが製作時間です。まっすぐ家には帰らずに、謎のタネをもとめて夜中にウチの近所を歩きまわりました。なんやかやで4ヶ月もかかりましたが、なんとか完成しました。
【ウチの近所謎の冒険】
数枚の紙がはいったクリアケースと、キーチェーンでつないだボールペン。クリップボードに固定してあります。
謎を解くのは小学6年生の息子(兄)・小学2年生の娘(妹)・そして妻(母)です。出題者のボク(父)は、街歩きのさいに万が一のことがないよう、娘の後ろからついていって見守ることにしました。
まず解くのにいちばん時間がかかりそうな小2娘がゲームを開始します。
最初の謎を自宅で解かないと、外に出てもどこに行けばいいのかがわかりません。
2月の休日の午後1時、スタート。
娘が家を出てから15分後に妻が家を出ます。
息子がさらにその15分後、つまり妹に30分のアドバンテージを与えてから出発するルールにしました。
これまで数々の謎解きゲームに参加して、経験をつんで、すっかり知恵がついて自信まんまんの小6息子は、もちろん、先行するふたりに追いつくつもりなのです。
【表紙】
自宅の壁や屋根は水色なので、そのイメージです。
【全体の地図】
自宅から2キロ以内。小学校の学区内で、子供たちがひとりで出歩いても問題なさそうな範囲にとどめてあります。
【第1の謎ペーパー】
全体の地図から一部分を切りとった地図が描かれています。自宅周辺の狭いエリアです。
紙の上下に斜めの切り欠き、紙の左右には丸い切り欠きがあります。
裏に「いろは」の文字。
この謎の解きかたです。
上下の切り欠きに沿うように紙をすこし斜めに折ると、左右の切り欠きがぴったり合って地図の上に3つの丸い穴があきます。
穴のあいた場所がそれぞれ「い」「ろ」「は」の問題の場所を示しているのです。
ちなみに娘がこの第1の謎を解くのにかかった時間は10分くらい。
……ここだけの話ですが、自力では解けなさそうだとヒントをねだってきたので「紙を折ってみればいいんじゃない?」とさりげなくうながしてやりました(^^;)
第1の謎を解いてどこに行けばいいのかが分かったので、それではいよいよ自宅を出ましょう。
【第2の謎ペーパー】
「い」「ろ」「は」の3つの問題があります。地図でいちばん近いのは、自宅のすぐ前の「ろ」の場所。
ここにはゴミ集積場所があり、分別ゴミの収集曜日がしるされています。
「土」とセットになっているのは「火」。対応する文字は「ク」になります。
「い」「ろ」「は」の問題はどれから解いてもいいので、次にむかったのは「は」の場所。
教会の前です。
謎ペーパーに描かれたふしぎな形は、教会にある掲示板です。[A]〜[M]の場所には時間や電話番号などの数字がかいてあるので、ひとつずつ足し算してゆきます。
算数が苦手な娘、足し算をまちがえていたのでこっそり教えてやったことはナイショです(^^;)
正しく計算すると答えは「87」。対応する文字は「サ」と「ク」。
そして「い」の場所。
奇妙な形はアパートの入り口にある黄色いゲートでした。
最初の文字は「シ」。
3つの問題を解いて謎ペーパーに記入すると、
「シクサク」→それぞれの文字に濁点がついて、キーワードは「ジグザグ」になりました。したがって次に行くのは「ジグザグの階段」です。
全体の地図をよく見ると、たしかにジグザグの階段があります。行ってみましょう。
【第3の謎ペーパー】
ジグザグの階段は急な崖斜面をショートカットするための階段です。のぼりくちに、このあたりの山を切りひらいて道を作った開拓者の業績をたたえる石碑があります。
小学生にむずかしい漢文調の石碑は読めませんが、カタカナならわかります。
「サ」「ル」
「ス」「シ」
「サル」と「スシ」。
この第3の謎を娘が解いているときに、15分遅れて出発した妻が追いついてしまいました。自分ひとりで謎を解きたい娘は、母親と一緒に行動するのを嫌がります。ライバルなので。
妻は空気を読んで、これ以上は娘に追いついてしまわないよう、後ろからゆっくり歩いてくれました。あとから聞いたところによると、時間をつぶすためにわざわざ遠まわりまでしたそうです。
さてさて、判明した「サル」「スシ」のキーワードですが、「紙ひこうき」とはなんでしょう?
謎ペーパーに混じって、いかにもあやしげな文字だらけの紙があります。
この紙を折り線にしたがって折ると……
紙飛行機が完成。
「やじるし」発見。
翼の文字の一部分を、全体の地図に書かれていた文字っぽいものにぴったり合わせて「サル」「スシ」にすると……、
大きな赤い矢印が次の場所を示しています!
【第4の謎ペーパー】
大きな赤い矢印がさしていた駅の近くにやってきました。
4つの色が並んでいるものを探すと、ありました。
ベンチです。正しいのは「1」。これはかんたんですね。
ところが次にどこへ向かえばいいのかがわかりません。
「見のがしたやじるし」……?
紙飛行機をもう一度よく見てみましょう。
小さな矢印を見逃していました!
【第5の謎ペーパー】
坂を登ってきました。小さな矢印がさしていた場所には幼稚園があります。
かわいい動物のイラストがたくさん。
「いない動物」を通ってしまわないよう、たんねんに確認しなければなりません。
「ゾウ」「ワニ」「ライオン」……、
「カバ」「クマ」「キリン」……。
迷路はかんたんなので、すぐに解けました。
答えは「2」。
次はこの場所からいちばん近いポストに向かいます。全体の地図で確認すると、ここから200メートルくらいのところにポストがあります。
【第6の謎ペーパー】
ポスト。「消された数字」は……、
「3」。これもかんたん。
これで第4〜6の謎ペーパーの答えがそろいました。判明した数字は「123」。
全体の地図で「123」の指さすところに行ってみましょう。
ゲームも終盤です。もう1時間以上歩いていますが、
でも後ろからこっそりついていく予定だった父(ボク)とおしゃべりしながら歩くので、ひとりで解いているというよりふたりで散歩しているみたいな雰囲気になっています。
チラッ、チラッとこちらを見上げて父(ボク)の表情をうかがい、こっちの道で正しいの? と無言で確認する娘。うーん、まだひとりで謎解きするのはむずかしかったのかな……。
いよいよ指定された「123」の場所についたので、ものものしい封印を開けましょう!
【集大成の謎】
まずは指さす先をしっかり眺めて「青い山」を探します。
「青山」だ!
1つ、2つ、3つ、4つ……、
5つめも発見。あやうく見落とすところでした。
あらためてこれまで解いてきた謎ペーパーをよく見なおしてみると、
「山」「山山…」「山山山……」
5つの山がある謎ペーパーの色は「黄色」。
これまで解いてきた謎ペーパーから黄色い文字を探すと、
「じ」
「た」
「く」
「ポスト」
「じたくのポスト」
「トビラ」
「うら」
「じたく の ポスト の トビラ の うら に すべての謎の答えがあるぞ!」
娘が道ばたにすわりこんでたくさんの紙を広げながらあーでもないこーでもないと謎を解いていると、また妻が追いついてきました。
ほぼ同時に最終目的地へいたる謎を解きあかしたふたり。
ここで娘は、母親といっしょに「じたく」へむかうことにしました。ボクだけこの青山ビューポイントに残ることにします。
なぜか……。
あやうく忘れてしまうところでした。まだいちども息子の姿を見ていない!
妹のスタートから30分遅れて出発したはずのお兄ちゃん。あんなに自信満々だったのに、謎を解いて追いついてくる気配がありません。
もしかしたら予想外の近道をとおって、いつのまにか全員を追い抜いて、すでに「じたく」に到達しているのかもしれません。
いや、どうしても解けない謎に苦戦して、どこかでベソをかいている可能性もあるぞ……。
すこしはなれた物かげに隠れて、息子の到着を待つことに。
キョロキョロ。 気分はこんな感じ。
こんなに空は晴れわたっているのに、まだ来ない……。
あ。
……来ました。
娘たちがここを離れておよそ10分後、とくに焦ったようすでもなく、ぶらぶら歩いて息子がやってきました。
でんしんばしらの後ろにかくれて、気づかれないように観察します。うん、順調に集大成の謎を解いているみたい。
30分の遅れは挽回できなかったものの、さすがは我が家の惣領、完全に自分ひとりの力で、妹たちよりも速いペースでここまで到達してくれました。よかった。
謎を解き終え、急ぐでもなく「じたく」にむかう息子。気づかれないよう、たっぷりはなれて後ろからこっそりついて行きます。
【すべての謎の答え】
ほんのすこし先にゴールについていた娘たちが息子を迎えてくれました。
背後からあらわれたボクに「あれ? 父ちゃんどうして後ろにいるの」なんておどろきつつ、ポストをあけて、扉の裏を見て、「ふぅん、なるほどね〜」とクールに一言つぶやく息子。
これで全員がぶじに、みごとに謎解き完了です。
つかれたといいながらみんなで家にはいり、ちょうどいい時間だったので3時のおやつを食べながら、感想などを聞かせてもらいました。
娘「表紙に赤いポストの絵がわざわざ描いてあるのがさいしょからずっと気になってた」
←いいところに目をつけてましたな。
息子「とちゅうで学校の友達にあって『なにしてるの?』って聞かれたから『謎解き』ってこたえたら『変なの』っていわれた」
←そんなこともあって時間がかかったのか。
妻「これ、売れると思うよ」
←買ってもらえたらうれしいけど、自宅もセットで売らなきゃならんぞ……。
「青い鳥」
- 作者: メーテルリンク,Maurice Maeterlinck,堀口大学
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1960/03/22
- メディア: 文庫
- 購入: 6人 クリック: 149回
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ゴールを自宅にしておけば、謎解きゲームが終わったあとすぐ帰れると思っただけなのです。あとから思いついて「青い鳥」にむすびつけたのでしたが、なんだかずいぶん深いコト言ってるみたいにまとまったのでよかったです。
「きょうはなんのひ?」
名作絵本。これを読んでまねして遊んだことのある人も多いのでは? 「木」のつく字を読んでねーって謎解き明かしのヒントを出すシーンが大好きで、今回つくったウチ謎でも「黄」の字を集めることにしました。
「ゆかしたのたから」
隠れた名作です。かわいらしい佐々木マキさんの挿画で描かれた主人公のきゅうりとたまねぎが宝探しに出かけます。「宝の地図というのは発明できるものだったのか。そういうこととはまるで知らなかった!」というとぼけたセリフがあります。ポストも登場します。ぜひ図書館でさがしてみてください。
【オマケ】
「アオヤマ」
「ヤジルシ」
自宅の場所を秘すため、ブログにあげた謎の内容にはいくつか改変を加えてあります。
それでももし、ウチの場所が特定できちゃったというかたがいらっしゃいましたら、そっと胸にひめて、誰にもいわないでおいていただけると助かります。
ウチのポストにはまだいまもあのシールが貼ったままで、ときどき息子や娘がポストをあけて覗きこんでいます。